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頭班車

2011/09/06
category - 政治
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頭班車 

劉心心

私の読んだ忘れがたい文章に、「淡谷のり子を聴き終えないで」と言う、太平洋戦争敗戦まぢかの、日本の航空基地での出来事を書いたエッセイがある。

――連日のグラマン機の激しい来襲、戦友の死、焼け野原になった日本、そんなさなか、有名なブルースの女王淡谷のり子さんが基地に慰問に訪れた。淡谷さんが歌ったのは、誰もが知っている、それぞれに思い出を持つ懐かしい歌。何曲かが歌い続けられ、雰囲気が高まってきたときに、隊員達の中から一人又一人と静かに席を立っていくのがいた。彼らは淡谷さんに向かって上体をサッと前に傾け、軍人としての礼を送って離れていく。沖縄の敵艦に突入のために出撃する特攻隊員だった。

――こうして還えることのない戦闘機隊は沖縄に飛び立ち……基地上空を二度三度と旋回……彼らには再び見ることのない故国の山河である。去りがたい思いを断ち切って機は南へ向かう。
沖縄近海上空の観測機から『一番機突入』のあとツーと長く続く発音信がプツンと切れて、その時ひとりの生命が消えた……….

死地に向かう特攻隊員の姿を斯くも美しく描いたこの文に私は大変感動したが、同時に羨ましくも思った。

戦争が終わった時、これで自分達は、歴とした一国の正式の国民になることができる。もう植民地の人間ではなくなったのだ。と台湾全島の皆が喜んだ。これからは自分等が故郷を立派に栄えさせていくのだと、皆胸を膨らませていた。

中国の事、政治の事等全然知らず、ただ、日本が来る以前は清国が政府を置いていたと言うだけの理由で、私達は中国を祖国だと思い、実際は占領に来たのだ、とも知らずに、祖国の軍隊として中国の軍隊を歓迎すらした。そして、瞬く間に完全に裏切られた。

恐怖政治、そして幾多の、社会のリーダーや前途有望な台湾青年が拉致され、残虐非道な拷問の末、政治犯として、家族とも連絡できずに監獄に押し込められ、その大多数が銃殺された。

その監獄の中、収容人員の急増で狭すぎて、寝るのに、半分ずつ立って、交代で横にならねばならない汚い獄室、粗削りの丸太の床、拷問の傷から流れ出る血の滲んだ衣服。獄室の隅の、今にもあふれそうな便桶、蚤、虱、蚊。
一体どうして罪があるのか、これから自分はどうなるのか、怒り、不安、恐怖の中に過ごす彼等に、はっきりと解る一つのことがあった。

早朝の出発。それを彼等は、「頭班車」(始発車)と呼ぶ。
寝むれぬ夜が、もうすぐ明けようとする頃、獄吏が名を呼ぶ声が獄中に響き渡る。呼ばれた者はすなわち、有無を言わさず、直ちに引きずり出されて刑場の露と消える者なのだ。真っ暗闇の中、此等の人々は獄舎の中庭に待っているトラックに、後ろ手に幾重にも縛られて、追い上げられ連れ去られる。当日最初に出ていく車「頭班車」。

獄舎の中で、誰一人寝ているものはなく、皆が目を血走らせ、耳を側立てているのを知っている彼等は、、獄吏の、暴力交じりの怒声に消されながらも、闇に向かって最後の言葉を大声に叫ぶ。我が名を名乗り、家族に伝えてくれと絶叫する者、蒋介石を罵倒するもの、台湾独立を願う叫び、夫婦で捕らえられていたのは、この監獄の何処かで聴いているに違いない、愛する妻に向かって最後の呼びかけをしていたという。

鬼神をも泣かすその叫び声は、暗闇を天空にまで駆け上り、月も曇り、暁を待つ星も、その哀れさに瞬きを凍らせたことであろう。

最後に淡谷のり子のブルースを聴き、従容として誉れ高く逝った日本の特攻隊員。同じように国を愛し、故郷を愛したのに、驚愕し、ボロボロになって、無念をのんで逝かせられた台湾の青年達。
同じ時代を、同じく死地に赴いた青年の、あまりの境遇の差に私は涙を禁じえない。

冒頭に引用させていただいたこのエッセイの著者藤本義一氏は、後に反戦運動に加盟し、世界の平和を唱え続けることで、亡くなった特攻隊員に応えていると言う。

白色恐怖で逝かせられた台湾青年達に私達が応えられる日は来るであろうか?


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